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まるで貸切の海!ひっそりとした雨池

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 山道を下ってきたその先に「え?砂浜?」。キャッキャと小走りになって雨池の淵まで行き、その水に手を触れると、「ぬるい〜!」と苦笑してしまった。

 北八ヶ岳にある雨池。苔の森として有名な「白駒の池」は麦草峠のすぐ南側にあるが、その北側に位置する縦長の形をした雨池に私は興味をもっていた。

  6月下旬、天気がよさそうなので、私はひとり麦草峠へ向かった。すでに白駒池入口の駐車場には県外ナンバーの車も多く停まっている。白駒池に向かう人たちを横目に、私は北へ進路を取り、急登をせっせと進み茶臼山、縞枯山を縦走して、雨池峠へ下りてから雨池へと向かった。

 道幅の広い大石川林道から雨池へと下る標識を見つけ、「さあ、いよいよ」と雨池との対面をワクワクしながら下りていくと雨池西岸に着いた。が、まだ池辺には近づけない。雨池をぐるりと一周できそうなのだが西岸から南岸の道は不明瞭とガイドブックに書いてあったので、北岸をまわって東岸へ。 

すると、砂浜と静かに波打つ雨池が待っていた。平日だったので道中の登山道でも人は少なかったが、雨池には一人もいない‼︎ 白駒池の人気ぶりとは真逆。こんなにひっそりとした場所だなんて。

 雨池の水量は降雨量によって左右されるらしく、夏至を過ぎたこの日は晴天で、お日様のパワーをさんさんと浴びた池の水はぬるかった。山上だからと冷たい水を期待していたのが間違いだ。

 雨池の東岸からは、さっき縦走してきた茶臼山、縞枯山が見える。プライベートビーチのような砂浜で、のんびりと今日の道のりを振り返りながら、ひとり静かな時間を満喫した。

 そろそろ麦草峠へ戻ろうかと歩き始めたそのとき、八柱山への分岐に立つ標識に「八千穂村」と見つける。白駒池近辺にある新しい標識に比べると「こんなところも手つかずなんだ」と思わずニヤリとしてしまう。この標識は、このままで残しておいてほしいな。

 雨池南岸からまた大石川林道に上がり、麦草峠へと登っていった。そして、歩いているうちに思いついた。「そうだ、小学校での次の読み聞かせは、この道中をお話にしよう」と。

 佐久穂小学校の3年生は、町内のあちこちに社会見学に出かけている。小3息子の話を聞いてうらやましく思っていたので、私もこの町内散歩(登山)を紙芝居にして、ボランティアでしている読み聞かせで子どもたちに聞いてもらおうと思いついたのだ。さっそく雨池と八千穂村の標識も絵に描き、3年生の息子のクラスでの読み聞かせへ出向いた。

 「佐久穂町の雨池の近くにある標識には、八千穂村と書いてありました。なぜでしょう?」

 私がそう尋ねると、女の子が手を挙げて、「佐久穂町は昔は八千穂村と佐久町だったからです」と答えてくれた。そのていねいで完璧な答え方に、私はとても感心した。

 後日、息子が「ぼくも八千穂村の標識を見に行きたい!」と言った。夏休みに入ったらすぐに二人で雨池に行こうと約束した。

 小3男子に茶臼山と縞枯山の縦走付きはさすがにハードだと思い、麦草峠から茶水ノ池に進み、そこからまっすぐ雨池へと北上するルートにした。このルートだと、雨池までの行きが下りで、麦草峠までの帰りが登りになるのがおもしろい。

 しかし、7月下旬で雨が数日続いたあとということもあり、途中の下りで登山道に水溜りが多数。1時間ほど歩くと、登山道が小川のようになっていた。気をつけながら石の上をたどっていた息子がついにポチャン。大石川林道に出る直前で、断念して登り返した。

​ 8月、夏休みももう残りわずかという日に息子と再度リベンジ。ひとりならスタスタと下れる岩だらけの登山道も、120センチちょっとの息子には「よっこいしょ」の繰り返し。思ったよりも時間がかかり、2時間あまりで雨池に到着。途中ですれ違ったのは、大石川林道から入った木道でマウンテンバイクを引いた男性ひとり。この日もひっそりとしていた雨池。

 6月に来たときよりも緑がより濃くなっていて、そして少しひんやりとしていた。秋の気配が近づいているのがわかる。

 白駒池のように駐車場からサクッとたどり着くことはできないけれど、この静けさは格別。私の宝物のような場所だ。

文:井上 ゆき

新聞社・出版社の記者を経て現在はフリー

冬はスキーインストラクター

Caffe/Lunch

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ロッヂ八ヶ嶺(ヤツガネ)

八千穂レイクの直ぐ近くで、自然園の入口にあります。

唐揚げ丼に使われているヤマメは、北八ヶ岳の渓流の水育ち。手打ち蕎麦等のお食事の他、ソフトクリームも。

※中部横断自動車道を八千穂高原IC.で降り、国道299号を左に進み12.7km。

途中「やちほ夢の森」から町道に入ります。

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レストラン Hamonize

広い芝生の庭に面したスタイリッシュな洋風レストラン。中部横断自動車道・八千穂高原ICを降りて直ぐで、窓から見える景色が抜群なレストラン。開業から23年、2代目の佐々木洋介さんがお母さんから受け継いだ家庭的な洋食をはじめ、洋介さんの奥さんが焼いたパン、お父さんがサイフォンでいれたコーヒーも味わえます。家族経営でも無理なく提供できるようにと、ランチセットはハンバーグ・パスタ・ピザ・グリーンカレーの人気6種のみに厳選して提供。それだけに「どれもはずれなし」と評判です。

※中部横断自動車道を八千穂高原IC.で降り、国道299号を右に進み250m。

>佐久穂町観光協会_お店紹介

​>さくほ町民キッチン_レストラン紹介

>佐久穂ライフスタイル研究所_レストラン紹介

Local Info.

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※奥村土牛記念美術館は、2023年3月から改修工事のため休館中。再開は、1年後の2024年春の予定。

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