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用水が引き込まれた池から、美術館の大きな木造建築を眺める

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JR小海線を八千穂駅で下車し駅舎を出ると、車の往来もそれほど多くない長閑な通りがある。

 

線路の反対側は、視界を遮る高台となっている。

高台の斜面には、つづら折りに取り付けられた道があり、マルト坂と呼ばれている。

マルト坂を登りきる。

思いがけず農地が広がり向こうには崎田区という集落が見える。

 

高台から駅や町を見下ろす木陰に大きな石碑がある。

石碑には、崎田集落に生まれ長野県を代表する地銀、八十二銀行の礎を作った黒沢鷹次郎(くろさわ たかじろう)の業績が記されている。

 

黒沢鷹次郎は、1850年に信濃国佐久郡崎田村(現佐久穂町崎田区)に生まれ、第十九国立銀行(八十二銀行の前身の一つ)の設立に参加し、頭取を務めた。諏訪倉庫を創業するなど、信州の製糸業の発展にも尽力した。この人の父・利佐衛門は、1898年に黒澤合名会社を設立し、事業を5人の息子たちに分割した。長男の鷹次郎に銀行、次男に呉服太物卸業、三男に酒造業、四男に味噌醤油醸造業、五男に薬品卸業を継がせた。

 

黒澤合名会社は、屋号を事業繁栄、旭日昇天の意味を込め「丸登」と定め、㋣(マルト)と称すようになった。マル=太陽、ト=昇るである。

このとき酒造業を継いだ三男・嘉四蔵は、黒澤酒造の現会長・黒澤一雄氏の曽祖父にあたる。

 

駅舎を出て右に向かうと直ぐ、奥村土牛記念美術館の大きな日本建築が見える。

建物は1927年に黒澤合名会社の社屋として建てられ、集会等に使われた。

1985年に当時の八千穂村に寄贈されたが、戦後4年間、この建物の離れで奥村画伯とその家族が生活をしていた縁で、画伯から寄贈された作品を収蔵、展示する美術館として1990年に開業した。

奥村土牛は自然を愛し、草花をテーマにした作品を数多く残している。

美術館の庭園は、季節によって画伯が作品に取り上げた様々な草花で彩られる。

水面に花木を映す池越しに見る、堅牢な日本建築は、大正、昭和期の人々の活力と戦前から戦後にかけての記憶を刻み込んでいる。

※奥村土牛記念美術館は、2023年3月から改修工事のため休館中。再開は、1年後の2024年春の予定。

 

 

美術館から先には、用水の流れに沿って黒澤家関係の建築が続く。白壁の土蔵と用水が街並みを印象的にしている。

軒先に杉玉のある建物に行き着くと、そこは黒澤酒造の社屋。敷地には、銀行蔵と呼ばれる八十二銀行の前身の店舗も現存する。

酒造りのジオラマや道具・古民具などを展示した資料館、蔵のお酒が取り揃えられた蔵元ショップ(ギャラリーくろさわ)もある。ギャラリー喫茶では、酒蔵の湧水で沸てられたコーヒーや吟醸ケーキや地酒も提供される。

ここで夏に販売される、蔵の甘酒や地元フルーツを使ったジェラートは、ぼんやり北八ヶ岳を眺めるひと時にピッタリだ。

八千穂駅を出て左手には、最近町に移住したご夫妻が開店したパン屋さん、Tummy Bakery(タミーベーカリー)がある。少し先には、これも移住者の若いご夫妻が運営を担う、一等貸し切りの古民家宿、黒澤邸 hanare がある。そこから、右手の緩やかな坂を下ると千曲川を渡る天神橋にでる。川の堤防を右方向、すなわち浅間山を前方に見ながら進むと、堤防や河岸段丘の集落路をたどって黒澤酒造の方向に散策することができる。

一巡したら八千穂駅前にある、restaurant たかとんぼ、に。

とんぼをモチーフにした彫金オブジェがさりげなく店頭を飾り、帰路の小海線を待ちながら、店主が抽出するコーヒーと手作りケーキをいただくと、散歩の疲れを忘れる。

八千穂駅前の車の往来が少ない長閑な通りは、ありがたい。

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文:りき(^^)/

南佐久の高原エリアに暮らす

さくほジーバ共和国執事

柴犬メイの同居人

Access

  • 鉄 道:

     〇JR小海線・八千穂駅下車

  • 自動車:

     〇中部横断自動車道・八千穂高原IC、国道141号から「JR小海線・八千穂駅」へ

 

  • 駐車場:

     〇奥村土牛記念美術館の駐車場

Caffe/Lunch

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restaurant たかとんぼ

JR小海線・八千穂駅前。たかとんぼは1990年に、奥村土牛記念美術館が開業時に、訪れるお客様のお休み所として始まった。とんぼをモチーフにした彫金オブジェがさりげなく店頭を飾り、帰路の小海線を待ちながら、店主が抽出するコーヒーと手作りケーキをいただくと、散歩の疲れを忘れます。写真は「さくほなーら」。佐久穂町産の米で作られる麺でもっちりとした独特の食感の「さくほーめん」のパスタ。

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黒澤酒造

酒蔵ショップ「ギャラリー黒澤」では、黒澤酒造のお酒、ローカルクラフト品等の販売。黒澤酒造の季節商品や限定品、大吟醸など6種の試飲は、お猪口付きで3種300円、5種600円。また、佐久穂町在住で「信州の酒PR大使」由井志織さんが、利き酒に最適な器を追及して試作を重ね完成させた酒器「酒の香唎(かき)く」等も販売されています。

隣接のギャラリー喫茶では、酒蔵の湧水で沸てられたコーヒーや吟醸ケーキの他、夏季にはジェラートニーナが出店し甘酒や果実のジェラートも楽しめます。

※JR小海線・八千穂駅から徒歩4分。

国道141号からは、佐久穂宮前の信号から東に550m。

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Tummy Bakery(タミーベーカリー)

JR小海線八千穂駅前の焼き立てパン屋さん、北海道産小麦100%&無添加生地/生酵母&天然酵母パン。

町内産の信州サーモンを使ったパニーニ等の惣菜系パンの他、キャンディミント風味のチェコデニッシュ、信州味噌あんの塩バターロール等、テイクアウトにもピッタリ。2023年5月のテレビ朝日「人生の楽園」の主人公に。

※JR小海線・八千穂駅駅前。国道141号からは、佐久穂宮前の信号から950m。

JR小海線八千穂駅前の焼き立てパン工房。北海道産小麦100%&無添加生地/生酵母&天然酵母パン。町内産の信州サーモンを使ったパニーニ等の惣菜系パンの他、信州ご当地パンのオリジナル牛乳パンやおやきパン等、テイクアウトにもピッタリ。

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Local Info.

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※奥村土牛記念美術館は、2023年3月から改修工事のため休館中。再開は、1年後の2024年春の予定。

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