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芝地の展望台から、コンクリート造りの美術館を眺める

北八ヶ岳山麓のその美術館の建物後方には、斜面が芝で整備され穏やかな空気が流れるスペースがある。
来館者があまり足を運ばないそのスペースには、コンクリートの避難階段か消防署の訓練タワーを思わせる櫓が、案内板もなく唐突に立っている。興味を引かれ、少し躊躇しながら階段を登ると、美術館建築を見渡す眺望を得ることが櫓の目的と分かる。
1997年、小海町高原美術館のオープンを伝えるマスコミ報道の印象はとても強かった。芝生からコンクリート構造物が地上に顔を出し、まるで丘陵に埋設されたような建築物。設計が著名な建築家、安藤忠雄であること。山麓の傾斜に抗うことなく、むしろ傾斜や岩石それ自体が美術館であるかのように、北八ヶ岳の遠望や山肌と一体化していた。
今、櫓に登ると当時報道写真で感じた不思議で新鮮な感覚が改めて甦る。

2022年は、美術館の開館25周年。名取淳一館長と学芸員の中嶋実の記念対談が公開された。「当館はコンクリート打ち放しと、外から入る光が空間を演出するという、安藤さんの設計の特徴的な要素を持っています。特色ある建物ですが、逆にそれが作品のジャンルを限定しない自由さを生み出しています。」と、建築と展示作品の関係性が語られている。
絵画展、ペーパークラフト展、アニメーション映画展、照明 器具展など、行くたびに変化する企画展。変わらず安らぎを感じさせる内部空間、風や緑に囲まれた外部環境。建築家の創意が、年を重ねるごとに立ち上がってくるようだ。
同じ敷地にある温泉施設の露天風呂に浸ると、自分も八ヶ岳の一部であったように感じた。
文:りき(^^)/
南佐久の高原エリアに暮らす
さくほジーバ共和国執事
柴犬メイの同居人
Access
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自動車:
〇中部横断自動車道・八千穂高原IC、或いは国道141号、国道299号茅野市から小海町高原美術館に。
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駐車場:
〇小海町高原美術館の駐車場
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鉄 道:
〇北陸新幹線・佐久平駅または、中央線・小渕沢駅からJR小海線で、小海駅または、松原湖駅下車し、
小海町営路線バス・松原湖線で約20分。バス便は、夏季、冬季ダイヤで異なりますので、事前にお確かめください。
Caffe/Lunch
カフェレストラン 花更紗
屋外展望台を降り、企画展を鑑賞後、美術館併設のカフェ花更紗でスイーツをオーダー。芝地に開けた窓外を眺めていると、北八ヶ岳斜面の岩石屈に住む自分を想像。
写真左の倉掛豆きな粉のプリンは、ナツメのシロップの酸味が効いて大人の味。写真右のカッサータは、アイスクリーム、チーズにオレンジやナッツのドライフルーツが閉じ込められてリッチな味わい。
地元のハクレイ茸や高原野菜を使った料理も。
TEL:0267-93-2151
※国道141号・松原湖入口信号から西に約4.4㎞。八峰の湯の隣。中部横断自動車道・八千穂高原IC.からは、国道299号を左に進み八千穂高原を経由するルートで約23.3km。